決算書はあくまで過去の情報であり、未来の数値ではありません。しかし、そんな決算書を将来の経営に活かすことで「骨太の会社」を作るヒントとなることがあります。決算書は経営に活かして初めて効果を発揮します。

自社の数値を把握・分析する

何故、そうなったのか考える

これからどうなるのか予測する

今後の打つべき対策を検討する

 

どういった、数値を活かせば良いのかは、もちろん、会社ごとに異なりますが、ここでは、わりと一般的なものをピックアップし、将来に目を向けた会社経営を行うための数値の活かし方をご説明します。

(会社の「成長性」・「安全性」・「収益性」について説明しております。)

また、数値に関しては、社歴があれば前々期くらいからの時系列の推移を見ることで、より効果的な場合もございます。比較的早い時期から、将来的に「活かす」ことを想定して数値の把握をしておくことをお勧めしています。

決算書の「活かし方」として、一番基本的なのは、自社の数値が前期に比べて、良かったのか悪かったのかを把握することだと思います。

名称 算出方法 数値の意味 備考
売上高増減率(%) (当期の売上高の増減額÷前期売上高)×100 売上高が前期に比べて何%増減したかを表す指標です。

前期と比較して、今期、増加したかどうかを把握するための指標です。
売上高増加率や経常利益増加率が伸びていると基本的には望ましい。増収・増益の状態です。

ただし、資産の増加率>売上高・経常利益増加率のときは、その原因や効率性について吟味する必要があります。

経常利益増減率(%) (当期の経常利益の増減額÷前期の経常利益)×100 経常利益が前期より何%増減したかを表します。
総資産増減率(%) (当期の総資産の増減額÷前期の総資産)×100 総資産が前期に比べ何%増減したかを表す指標です。

安全性の分析は、会社が倒産しない体質になっているか、を早めに把握することが主目的です。

安全性分析の代表的なものを紹介します。

名称 算出方法 数値の意味 備考
流動比率(%) (流動資産÷流動負債)×100 資産と負債を比較して会社の短期的な支払い能力を判断します。 数値が高い方が、安全性が高い。100%以下の数値が算出された場合は要注意です。
株主資本比率(%) (株主資本÷総資産)×100 過去の利益の蓄積度合いなど、会社の財務体質を判断します。 一般的には数値が高い方が財務が安定しています。
売上債権回転期間(カ月) 売上債権÷1カ月平均売上高 売上債権の回収状況から、会社の資金繰りを判断します。 自社の時系列を比較し、長くなってきていると要注意。(回収できていない債権・不良債権があるかも)
棚卸資産回転期間(カ月) 棚卸資産÷1カ月平均売上高(または売上原価) ある商品を売るのに、どれくらいの期間在庫を保有していたのかを見る指標。 自社の時系列を比較し、長くなってきていると要注意。(不良在庫をかかえているかも)


売上債権や棚卸資産の金額が重要な業種の会社にとっては、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間を時系列で把握しておくことは、会社のキャッシュフローを悪化させないためにも重要なことになります。

決算書から分析された数値は主に2つの視点で分析します。

まず、自社の過去からの時系列の推移と比較します。その次に、同業他社の平均的な、あるいは目標とする数値と比較します。
 

ここでは、収益性を分析するための主な指標を紹介します。

特に、損益分岐点売上高とROA(総資産利益率)については詳しく説明します。

名称 算出方法 数値の意味 備考
売上高経常利益率(%) (経常利益÷売上高)×100

企業全体の儲けの度合いを示す最も基本的な指標です。

売上高が大きいかどうかも重要ですが、それ以上に経常利益率は「骨太の会社」であるか否かを測定するうえで重要です。

金額の大小よりも、その効率性を重視。率が高いほど、望ましい。
資本回転率(回) 売上高÷総資産

総資産が売上高という形で、何度回収されたかを表す指標です。

数値が大きいほど、資本が効率的に利用されていることを意味します。
損益分岐点売上高 少し難しいですが、重要な考え方ですので、下の記事で別途記載しております。
ROA

損益分岐点売上高の把握

損益分岐点売上高とは会社にとって、利益も損失も出ない売上高のことです。つまり、会社にとって、営業赤字に陥らないために、獲得しなければならない最低限の売上高のことをいいます。

損益分岐点売上高を数値として会社の中で把握しておくことで、最低限、その売上高を獲得するために必要な行動は何かが、イメージしやすくなります。

例えば、仮に損益分岐点売上高が100であることがわかっていれば、単価が5のものを扱っていれば、赤字にならないためには最低限20個売る必要があるということです。
 

損益分岐点売上高を把握するためには、最初に、費用を固定費と変動費に分解する必要があります。
固定費とは売上の増減に関係なく発生する費用で、家賃や正社員の人件費などが代表的なものです。一方、変動費とは、売上の増減に比例して発生する費用で、例えば飲食店の材料費などが代表的なものです。

変動費と固定費に分解できたら、実際の損益分岐点売上高を把握していきます。損益分岐点売上高は、下記の算式により把握することができます。
 

損益分岐点売上高=固定費/(1−変動費率)

ここで変動費率=変動費/売上高で求めます。
 

例えば、自社の固定費が60、単価10の売上高の変動費が4の場合、

まず、変動費率=変動費4/売上高10より0.4となります。


損益分岐点売上高=固定費60/(1−変動費率0.4)=100となります。


損益分岐点売上高は100のため、単価10のものを10個売って、プラスマイナスゼロの利益になるということが把握できます。
 

目標利益達成売上高

この応用版として、達成したい利益を獲得するためには、いくら売上高が必要かも把握することが可能です。
先程の、分子の固定費に目標利益を足して計算すれば、目標利益達成売上高が計算されます。

目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)/(1−変動費率)で計算されます。


例えば、先程の設例に、当社の今期の目標利益は30だと設定すると、その目標を達成するために必要な売上高は、

(固定費60+目標利益30)/(1−変動費率0.4)=150と求められます。

目標利益30を達成するためには、売上高が150必要になるということがわかり、その目標を達成するための行動がより具体的に計画しやすくなります。

ROAにこだわろう

会社の収益性を測定するものとしてROAというものがあります。ROAとは総資産に対する利益率で、利益を生み出すために、いかに資産を効率よく使って有効活用しているかという指標です。

imageROA.png

この数値が高いほど、少ない資産で効率よく利益が獲得できていることを意味します。自社のROAを何%以上にする、ということを目標にしている会社もあります。

 

ROAの改善を目指そう

ROAは、分子の経常利益を上げるか、分母の総資産を下げるか、その両方を行うことで改善します。
分子の経常利益を上げるためには、売上を上げる、コストを下げるといったことで改善します。コストを下げる場合にはどのコストを下げるのかを判断する必要があります。

分母の総資産を下げるには、資産の圧縮、スリム化で改善することができます。
 

もう少し、詳しく見ていきますと、ROAは以下のように分解できます。

imageROA細分化.png

1つは左側の売上高経常利益率、もう1つは右側の総資本回転率というものに分解できます。ROA(総資本利益率)UPのために、2つの率を高めていこうと考えるわけです。
 

売上高経常利益率は、資金運用(銀行借入利息)も加味した企業全体の儲けの度合いを見る最も基本的な指標で経常利益÷売上高で計算されます。

総資本回転率は、投下した資本がどれだけ売上に貢献したのかを見るもので、売上高÷総資産で計算されます。総資本回転率が高いということは、少ない資本で、効率よく売上を獲得できたことを意味します。
 

少し難しくなりましたが、これらの、自社の各数値をまず計算して、なぜ、そのような数値になっているのかを把握します。さらに、このままで良いのか悪いのか、悪い場合には改善させるために、自社にはどのような行動が選択肢としてあるのかを検討して、将来への行動へと繋げていくことで、「骨太の会社」への土台を作ります。

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